発達障害(ADHD・ASD)で障害年金を申請する方法|初診日・診断書・申立書

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「診断がついた。じゃあ年金はもらえるのか」

ユウさん(28歳)は、社会人6年目でADHDとASDの診断を受けた。学生時代から忘れ物と提出遅れが直らず、就職してからはミスの指摘と謝罪を繰り返す日々。二次障害のうつ状態で休職に入り、受診した先でようやく名前がついた。

診断がついて、少しほっとして、次に浮かんだのが現実的な疑問だった。発達障害で、障害年金はもらえるのか。

答えは「もらえる。ただし診断名では決まらない」だ。実際、障害年金の実務では発達障害は完全に「主要な対象疾患」になっている。発達障害(ADHD・ASD)の依頼を専門的に受けている社労士事務所があり、精神疾患専門の事務所では発達障害での2級認定・数年分の遡及決定が積み重なっている。「発達障害では無理」という時代は、とっくに終わっている。

この記事では、その実務の現場と当事者の生活から見えてくる「発達障害の申請で本当に差がつくポイント」を、初診日・診断書・申立書・就労・更新・不支給後まで通しで解説する。

「特性」では対象にならない。「生活の支障」が対象になる

まず、審査の物差しを正確に掴んでほしい。認定基準はこう書いている。発達障害については、たとえ知能指数が高くても、社会行動やコミュニケーション能力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行えず、日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定する——。

つまりIQも学歴も職歴も、それ自体は不利材料ではない。見られるのは「特性があるか」ではなく「特性で生活と就労がどれだけ立ち行かないか」だ。

この線引きを理解するのに、実務経験者の発信がちょうどいい対比を示している。HSP(いわゆる「繊細さん」)について、それ自体は医学的な疾患ではないため障害年金の対象にならないが、うつ病などの精神疾患を発症していればその疾患で対象になり得る——という趣旨の整理だ。睡眠障害単体が対象外とされていることへの言及もある。

この構造は発達障害の審査の考え方を裏から照らしている。審査は「その人がどういう人か」ではなく「疾患・障害によって生活に何が起きているか」を見る。 発達障害は認定基準に明記された対象疾患だが、それでも「診断名がある」だけでは通らず、「著しい制限」の中身を書類で示せたかどうかで結論が割れる。この記事の残り全部は、その「示し方」の話だ。

初診日の分岐 — 発達障害はここが一番ややこしい

障害年金のすべての起点は初診日だ。発達障害は生まれつきの脳機能の特性だが、初診日は「生まれた日」ではない(知的障害を伴う場合を除く)。ここで人によって道が分かれる。

分岐①: 子どもの頃に受診歴がある → 20歳前傷病 幼少期や学生時代(20歳前・厚生年金非加入)に発達相談や児童精神科の受診歴があれば、20歳前傷病による障害基礎年金。納付要件が問われない代わりに、本人の所得制限がある。

分岐②: 大人になって初めて受診 → 受診日が初診日 認定要領は明確で、知的障害を伴わない人が発達障害の症状で初めて受診した日が20歳以降なら、その受診日が初診日になる。ユウさんのように在職中=厚生年金加入中の初診なら、障害厚生年金(3級もある)の土俵だ。

ここで思い出してほしいのが、精神障害2級の当事者が「障害年金の闇」として発信し、大きな反響を呼んだポストだ。長年厚生年金を納めた人が退職後に初めて受診すると、初診日が国民年金期間となり基礎年金しか対象にならない——。発達障害の文脈では、これは裏返しの助言になる。「もう限界かも」と思いながら在職している人は、退職前に受診しておくことが、のちの保障の階を変える。

分岐③: 最初は別の診断名だった → その受診が初診日 発達障害は、最初に「適応障害」「うつ病」「不安障害」と診断され、転院を経てようやく発達障害の診断に至るケースが多い。この場合、原則として最初に精神症状で受診した日が初診日として扱われる。「発達障害と診断された日」ではない。何年も前の最初のメンタル受診が起点になり得るので、初診日の調べ方で書いた掘り起こし(お薬手帳・紹介状・明細)がそのまま必要になる。

分岐④: 知的障害を伴う → 初診日は出生日 知的障害(療育手帳の有無に関わらず、知的障害が確認できる場合)は初診日=出生日として20歳前傷病で扱われる。

自分がどの分岐かで、必要書類も年金の種類も変わる。申立書を書き始める前に、ここを確定させる。

診断書 — 発達障害ならではの確認欄がある

診断書の一般的な確認ポイントは診断書チェックの記事で7点にまとめたが、発達障害には固有の確認箇所が加わる。

そして、医師は診察室のあなたしか見られない、という構造は発達障害でも同じだ。ミスの頻度、家族の声かけ、感覚過敏で消耗する場面——診察の数分で伝わらないものは、診察前メモの形で渡す。実務経験者の発信にある通り、家族や支援者による日常生活の具体的なメモ(第三者記述)は書類全体の整合性の裏付けになる。発達障害では「本人が困りごとを自覚しにくい」ことがあるため、家族目線の記録の価値はいっそう大きい。

「働けている」が一番誤解される — 就労と発達障害

発達障害の申請で最大の難所が就労の扱いだ。実務経験者の発信が繰り返し警告する構造——勤務の事実だけが伝わると「働ける=改善」と誤解される。欠勤・早退・配慮の実態まで書く——は、発達障害でこそ効いてくる。発達障害は「頑張れば一時的に取り繕える」場面が多く、在籍の事実と支障の実態が最も乖離しやすい障害だからだ。

「働けている」の内実がどれほど幅を持つかは、精神2級の当事者として障害者雇用で働く人物の発信が生々しい。障害者雇用の心得として6万回以上表示されたポストが挙げるのは、挨拶、しっかりした勤怠管理、感謝と謝罪が言えること。別のポストでは、十分な合理的配慮が得られるとは限らない、雇用形態は非正規が多い、求められる水準が健常者並のこともあるという現実を列挙している。配慮と自己管理でギリギリ成立している「就労」を、書類の上で「問題なく就労」と読ませてはいけない。

書類に載せるべきは:

なお同じ当事者の鉄則「職場で障害年金の話は絶対にするな」も添えておく。申請が会社に通知される仕組みはないが、自分から話せば知られる。書類の中では徹底的にオープンに、職場では慎重に——この使い分けは働きながらの記事で詳しく書いた。

申立書は「生まれてから」— 書き方のメリハリ

発達障害の病歴・就労状況等申立書は、先天性の障害として出生から現在までを書く。区切りは、幼少期(就学前)/小学校/中学校/高校/(大学・専門)/社会人以降、が基本形だ。

長い時間軸に全部を詰め込むと読めない書類になる。実務側の発信・解説で共通しているコツはメリハリだ。審査で特に重く見られるのは「障害認定日(20歳前傷病なら20歳の誕生日前後)の段」と「現在の段」。この2か所に頻度と具体例を厚く書き、それ以外の期間は特徴的な事実(忘れ物が多い、授業についていけない、友人関係のトラブルが続いた等)を端的にまとめる。

ミニ文例を4期間分示す(4要素=頻度・期間・援助・具体例の型は共通)。

【幼少期〜小学校】 幼稚園では集団行動に入れず、一人で図鑑を読んで過ごすことが多かったと母から聞いている。小学校では忘れ物が週の半分あり、連絡帳は担任が毎日確認していた。授業中の離席を毎学期指摘された。

【中学〜高校】 提出物は半分以上出せず、教師から毎学期指導を受けた。時間割の管理ができず、母が毎晩翌日の持ち物を確認していた。友人関係は、相手の冗談を字義通りに受け取って口論になることが年に数回あり、高2以降は昼休みを一人で図書室で過ごした。

【大学〜就職】 履修登録と課題の期限管理ができず、1年時に8単位を落とした。3年でゼミの人間関係につまずき、2か月大学に行けない時期があった(受診はしていない)。就職活動は母が日程管理を代行して1社に決まった。

【現在(社会人)】 一般雇用(クローズ)で事務職。口頭指示を覚えられず、月10件以上の手戻りが発生し、上司の判断で全業務にダブルチェックがついている。電話応対は免除されている。残業はないが、帰宅後は疲労で夕食を取らず寝る日が週3日以上。書類の期限管理は同居の母が代行している。昨年、抑うつ状態で2か月休職した。

「発達障害だから」とは一言も書いていない。特性が生活と就労に落とす影だけを、数えられる形で書く。 これが認定基準の「著しい制限」に対する、唯一まっすぐな答え方だ。

発達障害と遡及 — 「20歳の頃」を証明できるかの勝負

発達障害でも遡及(認定日請求)は可能だ。ただし「先天性だから認定日に該当していた」と自動的に扱われるわけではない。障害認定日時点の診断書と生活上の制限を示す資料が必要になる。

令和8年度の障害基礎年金2級は年額847,300円(子の加算を除く)。単純計算では3年分で約254万円、5年分で約424万円になるが、実際の額は対象年度ごとの年金額や対象月数で変わる。生活再建への影響が大きいからこそ、金額だけでなく証明可能性を先に確認したい。

鍵は2点に絞られる。

① 認定日(多くは20歳前後)の頃の診療記録が残っているか。 大学の保健センター、当時のクリニック、休学時の診断書。カルテ保存は5年なので、20代後半での請求は時間との勝負になる。転院していれば紹介状が当時の状態の証拠になる——紹介書類で過去が確定するケースが多いことは、実務経験者の発信でも指摘されている通りだ。

② 申立書の「20歳前後の段」に実態が書けるか。 実務側の解説で一致しているのは、遡及を狙う申立書では「障害認定日の頃」と「現在」の2か所が特に重く見られる、という点だ。20歳の頃、単位はどうだったか。休学・留年はあったか。バイトは続いたか。親は何を代行していたか。——この段が「特に変わりなし」で流れていると、いま2級相当でも遡及は立たない。

思い出せないなら、当時を知る家族に聞く。成績表・休学届・当時のSNSやLINEの記録も、記憶を復元する資料になる。遡及の可否は、しばしば「本人の症状」ではなく「過去の記録の残り方」で決まる。これが実務の残酷で、正直な現実だ。

診察前メモ — 発達障害版のA4一枚

医師に生活実態を伝えるメモの一般形は診察前メモの記事に載せたが、発達障害版はチェック観点が少し変わる。ユウさんの例で完成形を示す。

○○先生へ 最近1か月の生活と仕事の様子です。ご参考になれば幸いです。

仕事: 口頭指示の抜けによる手戻りが今月12件。全業務に上司のダブルチェックあり。電話応対は免除されている

勤怠: 遅刻2回(いずれも朝、身支度の途中で動けなくなった)。昼休みは毎日一人で過ごす

家事・金銭: 書類の期限管理と振込は母が代行。冷蔵庫の食材を腐らせることが月数回

感覚・疲労: 職場の話し声で午後は集中できず、帰宅後は夕食を取らず寝る日が週3日

対人: 同僚との雑談で意図がわからず後から一人で反芻し、眠れない日が週2日

気分: 日曜夜から月曜朝にかけて動悸。抑うつ気分が2週間続いた

※母から見た様子: 「休日はほぼ寝ています。声をかけないと入浴も食事も抜けます」

診断書の「発達障害関連症状」欄と7項目、二次障害の欄に、それぞれ対応する事実が一行ずつ入っている。最後の一行が、実務経験者の言う第三者記述だ。特別な文章力は要らない。数えて、書くだけでいい。

更新時期は個別に決まる — 年金証書をまず確認

受給後に障害状態確認届の提出が必要となる場合、時期は個別に指定される。令和6年度の日本年金機構の業務統計では、新規裁定の更新期間は1年・2年・3年・4年・5年・永久固定に分かれている。次の投稿はADHDとうつ病で2級、2年更新となった一事例であり、すべての発達障害に当てはまる目安ではない。

まず年金証書に記載された次回診断書提出年月を確認し、直近数か月の生活や就労の実態を記録し続ける。提出期限から逆算して早めに受診し、欠勤や職場の配慮も医師へ具体的に伝えたい。

2度目の申請は、初回より難しい — だから初回に全部出す

次の公開投稿では、本人請求で不支給となった後、専門家が関与して再請求しても不支給だった一事例が紹介されている。個別事例を一般化はできないが、再請求の前に前回の提出書類と決定理由を確認する必要性は伝わる。

初回から、初診日の証明・実態を反映した診断書・具体的な申立書をできる限り揃えたい。不支給後には、処分を争う審査請求と、現在の状態であらためて請求する再請求がある。目的と期限が異なるため、審査請求と再請求で整理している。

自分で書くか、専門家に頼むか

発達障害の申請は、専門家への依頼が特に多い分野だ。発達障害の請求代理を専門的に受けている社労士も、精神疾患専門で発達障害の遡及決定(数年分・数百万円規模)を重ねている事務所も実在する。初診日が争いになるケース、20歳前後の遡及がかかるケース、一度不支給になったケースは、依頼を検討する価値が高い。

一方で、初診日が明確で、通院が続いていて、生活の事実を書ける状態なら、自分での申請は十分可能だ。その場合の武器は記録しかない。

迷ったときの入口としては、年金事務所の無料相談(委任状があれば家族だけでも可)、市区町村の障害福祉窓口、そして障害年金を専門とする社労士の初回無料相談がある。X上の実務家の発信を読み比べるだけでも、「自分のケースはどの型か」(初診日が争点型か、遡及型か、就労評価型か)の見当はつく。型の見当がついてから相談に行くと、同じ30分の相談の密度がまるで変わる——この記事がその見当付けに使えれば十分だ。

このアプリは、質問に答えて期間の枠(幼少期から現在まで)を作り、日々の困りごとを1〜2行のメモで溜め、申立書の文体に整えるために作った。本人が書ける日は本人が、書けない日は家族が「見てきた事実」を書く使い方もできる。溜まった記録は、診察で医師に渡すA4書類としても印刷でき、最短1年で来る更新のたびに効いてくる。記録は端末の中だけ、ログイン不要、基本機能は無料。

よくある質問(FAQ)

Q. ADHDだけ(ASDなし)でも対象になりますか? A. なります。認定要領の発達障害にはADHD・ASD・学習障害等が含まれます。問われるのは診断名の組み合わせではなく、症状による日常生活・労働の制限の程度です。

Q. IQが高い・大学を出ている・職歴があると不利ですか? A. 認定基準は「知能指数が高くても、社会行動やコミュニケーション能力の障害による日常生活の制限に着目する」と明記しています。学歴・職歴そのものは欠格事由ではなく、現在の支障の実態が判断材料です。

Q. 大人になってから診断されました。初診日はいつになりますか? A. 知的障害を伴わない場合、発達障害の症状(または適応障害・うつ等の先行診断を含む精神症状)で初めて受診した日です。「発達障害と確定診断された日」ではない点に注意してください。在職中の初診なら障害厚生年金の対象になり得ます。

Q. 二次障害のうつ病があります。2つ分もらえますか? A. 併合(足し算)はされず、発達障害と併存疾患の諸症状を総合して1つの等級で判断されます。だからこそ、二次障害の症状が診断書に漏れなく反映されているかの確認が重要です。

Q. 一般雇用のフルタイムで働いています。無理ですか? A. 就労自体は欠格事由ではありませんが、援助や配慮なく安定就労が続いている場合のハードルは高くなります。受けている配慮、ミスや勤怠の実態、職場外の生活への影響まで書類に載せた上での判断になります。

Q. 更新は何年ごとですか? A. 個別に決まります。日本年金機構の公式統計では、新規裁定の更新期間は1年から5年または永久固定です。年金証書の次回診断書提出年月を確認してください。

Q. 一度自分で申請して不支給でした。もう一度出せますか? A. 再請求は可能ですが、まず前回の決定理由と提出書類を確認してください。処分を争う審査請求と、現在の状態であらためて請求する再請求は目的が異なります。審査請求には期限があるため、早めの確認が必要です。

Q. 子どもの頃の受診歴はないが、通知表に「落ち着きがない」と書かれていました。 A. 受診歴がなければ初診日は成人後の受診日になります(20歳前傷病にはなりません)。ただし通知表や生育歴の記録は、申立書で幼少期からの特性の連続性を示す資料として有効です。捨てずに使ってください。

まとめ

※本記事は、X上で公開されている実務家・当事者の発信を参考にした情報と、一般的な制度情報(障害認定基準・認定要領等)に基づくものです。受給や等級、更新期間を保証するものではありません。個別の判断は年金事務所・社会保険労務士でご確認ください。

参考リンク

制度の正式な情報・最新の様式は、日本年金機構のホームページおよび 年金事務所でご確認ください。