病歴・就労状況等申立書の書き方【精神疾患】受給者・実務者の発信から学ぶ、審査で落ちる書き方・伝わる書き方(期間別フル記入例つき)

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「一番つらかった話」を書いても、伝わらない

アキさん(32歳)は、うつ病で会社を辞めて2年になる。実家で母と暮らしながら、障害年金の申請を決めた。

年金事務所でもらった「病歴・就労状況等申立書」を机に広げて、1時間。書けたのは氏名だけだった。

「発病から現在まで」。そう言われて頭に浮かぶのは、一番苦しかった夜のことだ。でも、それをそのまま書けばいいわけではない。

審査する人は、あなたに会わない。 書類だけを読む。だから「どれだけつらかったか」ではなく「生活の何が、どのくらいの頻度でできなかったか」が読み取れない申立書は、素通りされてしまう。

この記事では、Xで障害年金についての発信を長く続けている2人——社労士事務所で働きながら、自身も障害年金の当事者として制度を経験してきた「障害年金の呟き人」さん(@f1c3n4WE1KMklqQ)と、精神障害2級の当事者であり税理士(国税OB)・社労士資格も持つ「岸野さん」(@coco_ruuchan)——の発信を読み込み、そこから見えてくる「申立書で本当に差がつくポイント」を、期間別のフル記入例つきで解説する。制度の一般論ではなく、当事者と実務者が繰り返し警告していることから逆算した書き方だ。

書き始める前に。当事者が「闇」と呼ぶ初診日の話

申立書は発病時から現在までを書いていく。だからこそ、ペンを持つ前に確認してほしいことがある。

岸野さんが「障害年金の闇の1つ」として発信し、9,000回近く表示され数百のリアクションがついたポストがある。趣旨はこうだ。社会保険料を長年納めてきた会社員が、障害が原因で退職し、退職後に初めて心療内科を受診した。するとその時点では国民年金加入者なので、障害基礎年金しか受給資格がない——というものだ。

このポストに多くの当事者が反応したのは、他人事ではないからだ。障害年金は「初診日にどの年金制度に加入していたか」で種類が決まる。厚生年金加入中の初診なら障害厚生年金(3級や一時金もある)、退職後・国民年金期間の初診なら障害基礎年金のみ(1級・2級のみ)。在職中の不調を我慢して、辞めてから初めて病院に行った人ほど、この壁に当たる。

申立書との関係で言えば、こういうことになる。

障害年金の呟き人さんも、統合失調症のケースを例に「初診日が古くて特定が困難になるケースがある」「医療機関からの紹介書類関係で初診日が確定できるケースが多い」という趣旨の発信をしている。転院時の紹介状は、初診日を証明する強力な証拠になり得る。申立書に書く前に、通院歴の中で「紹介状をもらった記憶」がないかを思い出しておくと、あとで効いてくる。

初診日の調べ方自体は初診日がわからないときの調べ方で詳しく書いたが、申立書との関係で覚えておくべきは一つ。申立書の1つ目の期間は、初診日の証明と整合していなければならない。 ここが食い違うと、書類全体の信頼が揺らぐ。

「盛ったら終わり」——実務者が最も強く警告していること

障害年金の呟き人さんの発信で、ひときわ強い言葉が使われている話題がある。不正受給だ。虚偽の申告や事実と異なる診断書で受給した場合、受け取った年金に利息を上乗せした返還請求が行われ、悪質なケースでは刑事罰もあり得る。「障害年金、生活保護の不正受給は、ダメ🙅絶対」と、普段は淡々と制度解説をしている人が、ここだけは断言している。

これは申立書にそのまま跳ね返ってくる話だ。申立書で症状を実際より重く「盛る」ことは、程度の差こそあれ同じ方向の行為で、しかも実利すらない。医師の診断書と食い違えば、審査側は診断書を信じる。 それどころか申立書全体の信頼が下がる。

一方で、呟き人さんは正反対の誤解にも釘を刺している。「正社員として働いている」「厚生年金を払っている」だけでは不正ではない。障害の状態が続いている限り、就労と受給は両立し得る。 盛るのもダメ、卑屈に諦めるのも間違い。正解はひとつしかない。

事実を、頻度と具体例つきで書く。 誇張は要らない。事実を淡々と具体的に書いた申立書のほうが強い。

就労欄が勝負どころ——「働ける=改善」と読まれない書き方

呟き人さんの発信で、申立書に最も直結するのが就労に関するものだ。更新(障害状態確認届)についての解説の中で、こう指摘している。就労している場合は、配慮事項や欠勤・早退の実態も記すこと。そうしないと「働ける=改善」という誤解を招く——。これは更新だけでなく、新規の申請でまったく同じ構造の話だ。

岸野さん自身、精神2級の当事者でありながら障害者雇用で働いている。その発信からは、「働いている」という一言の中にどれだけの実態の幅があるかが見えてくる。障害者雇用の現実として岸野さんが挙げるのは、十分な合理的配慮が得られるとは限らないこと、雇用形態が非正規の場合が多いこと、給与だけでは足りない場合があること、求められる勤怠管理が健常者並のこともあること。「在籍している」ことと「支障なく働けている」ことの間には、大きな距離がある。 審査側はその距離を、書かれたことからしか測れない。

だから就労状況欄には、在籍の事実だけでなく実態を書く。

アキさんの場合なら「在職していたが、最後の8か月は月5日以上欠勤し、入力作業は毎回上司の確認つきだった」まで書いて、初めて実態が伝わる。

期間の区切り方 — 手が止まる最初のポイント

ルールはシンプルだ。

見落とされがちなのが「受診しなかった期間」。ここを空白にすると、審査側は「よくなって通院をやめた」と読む余地が生まれる。実際は「悪すぎて外に出られなかった」のなら、そう書かなければ伝わらない。

各期間は、①頻度 ②続いた期間 ③受けていた援助 ④できなかったことの具体例、の4つで組み立てる。言葉で説明するより、1人分を通しで見たほうが早い。次の章で、アキさんの申立書を発病から現在まで全部見せる。

同じ事実が、書き方でこう変わる(ビフォーアフター)

フル記入例に入る前に、1つの期間で「落ちる書き方」と「伝わる書き方」を並べて見てほしい。

書き直し前:

毎日つらくて、家事も何もできませんでした。母に迷惑をかけてばかりでした。死にたい気持ちでいっぱいでした。

書き直し後:

週の半分は朝起き上がれず、食事は母が部屋まで運ぶ日が続いた。入浴は週1回できるかどうか。買い物は人と会うのが怖く、月に数回、母に付き添われて夜の時間帯に行くのみだった。金銭管理は母に任せていた。

書き直し前が「嘘」なわけではない。全部本当のことだ。だが審査側の視点に立つと、前者からは日常生活能力を判定する材料がひとつも取れない。「つらい」「何もできない」「迷惑をかけた」は、どれも程度と頻度が測れない言葉だからだ。

後者は同じ生活を、①頻度(週の半分、週1回、月に数回)②受けていた援助(母が運ぶ、付き添い、金銭管理)③できなかったことの具体例(起床、入浴、買い物)で描き直しただけだ。つらかった気持ちを消す必要はない。気持ちに、頻度と具体例を足す。 これだけで同じ事実がまったく違う濃度で伝わる。

なお、診断書の裏面には「日常生活能力の判定」という欄があり、食事・清潔保持・金銭管理と買い物・通院と服薬・対人関係・危機対応・社会性の7項目で評価される。申立書でも同じ場面を具体的に書いておくと、診断書と申立書が同じ生活を別角度から描くことになり、呟き人さんが繰り返し強調する「書類の整合性」がここで確保される。

【フル記入例】うつ病・発病から現在までの申立書(アキさんの場合)

前提: アキさん(32歳)。29歳のとき在職中に発病。半年我慢して心療内科を受診、その後悪化して退職。一時期通院が途絶え、現在は転院先に通院中。母と同居。

期間1: 発病から初診まで(令和5年4月頃〜令和5年10月)

令和5年4月頃から、営業事務の業務量が増えたことをきっかけに、寝つきが悪くなり、朝の吐き気と食欲不振が始まった。半年で体重が6kg減った。仕事のミスが増え、月に2〜3回、朝起き上がれず欠勤した。「怠けているだけかもしれない」と受診をためらっていたが、令和5年10月、朝の通勤電車内で涙が止まらなくなり、母の勧めで自宅近くの○○心療内科を受診した。

ポイント: 初診に至るきっかけ、症状の始まり、生活・仕事への影響を時系列で。「受診をためらった理由」まで書くと、発病から初診までの空白が自然に説明できる。

期間2: ○○心療内科への通院(令和5年10月〜令和6年6月)

2週間に1回通院し、うつ病と診断され服薬を開始した。服薬しながら勤務を続けたが、症状は改善せず、欠勤は月5日以上に増えた。担当業務は上司の判断で入力作業のみに減らされ、提出物は毎回上司の確認を受けていた。昼休みは人と話せず、車の中で一人で過ごしていた。令和6年6月、出社しようとすると動悸と吐き気で玄関から動けない日が週2〜3日続くようになり、退職した。

ポイント: 就労欄の考え方をそのまま本文に反映。「勤務していた」ではなく、欠勤数・業務の変更・受けていた配慮・辞めた直接の理由まで。

期間3: 受診しなかった期間(令和6年7月〜令和7年1月)

退職後、「仕事を辞めたのに通院にお金を使うことへの罪悪感」と、外出自体の困難さから、通院が途絶えた。この期間は症状が最も重く、週の半分は昼まで起き上がれなかった。入浴は週1回できるかどうかで、母に強く促されてようやく入った。食事は母が部屋まで運ぶ日が多く、一人での買い物や外出はできなかった。薬が切れてからは市販の睡眠改善薬でしのいでいた。令和7年1月、心配した母が探した△△クリニックに、母の付き添いで受診を再開した。

ポイント: ここが申立書全体で一番大事な枠になることが多い。「通わなかった=良くなった」と読まれないよう、通えなかった理由その間の生活の実態を具体的に書く。

期間4: △△クリニックへの通院(令和7年1月〜現在)

月2回、母の付き添いで通院している。服薬は継続しているが、飲み忘れが多く、母が毎朝薬を並べて確認している。現在も週の半分は午前中起き上がれない。食事は母が用意したものを1日1〜2回食べる程度。入浴は週1〜2回。買い物は一人ではレジに並べず、月に数回、母に付き添われて空いている夜の時間帯に行くのみ。金銭管理は令和6年秋頃から母に任せている。友人からの連絡には返信できず、この1年、家族以外との交流はない。就労はしておらず、求人を見ると動悸がして閲覧を続けられない。

ポイント: 現在の期間は、診断書の「日常生活能力の判定」7項目(食事・清潔保持・金銭管理と買い物・通院と服薬・対人関係・危機対応・社会性)と同じ場面を意識して書く。診断書と申立書が、同じ生活を別角度から描く状態を作る。

この4枠で、文字数にすればおよそ1,000字。「一番つらかった夜」の描写は一行もないのに、生活が立ち行かないことは十分に伝わる。 大げさな言葉を使った箇所もひとつもない。これが「事実を頻度と具体例で書く」の完成形だ。

なお、家族から見た様子を書き添えることにも意味がある。呟き人さんは(永久認定の文脈でだが)家族や支援者による日常生活状況の具体的なメモ、いわゆる第三者記述が、書類の整合性の裏付けになるという趣旨の発信をしている。アキさんの例で言えば「母から見た一日」のメモは、申立書の記述を裏から支える材料になる。

申請は職場に知られる? — 当事者の鉄則「職場で年金の話はしない」

働きながら申請を考えている人が、就労欄と同じくらい気にするのがこれだ。「申立書に勤務先のことを書いたら、会社に知られるのではないか」。

結論から言えば、障害年金の請求は本人(または委任を受けた人)と年金機構の間の手続きで、申請したこと自体が勤務先に通知される仕組みはない。申立書に勤務実態を書いても、その内容が会社に照会されて本人の同意なく共有される、というものではない。安心して実態を書いていい。

ただし、当事者の側から見た処世術は別の話としてある。岸野さんが障害者雇用の心得として発信し、6万回以上表示された有名なポストがある。障害者雇用で大事なのは、挨拶、しっかりした勤怠管理、感謝と謝罪が言えること——と続けたうえで、最後にこう締めている。「絶対に『障害年金』の話はするな」

制度上は知られない。でも、自分から話せば当然知られる。そして受給の有無は、職場の人間関係において妬みや詮索の火種になり得る——2級当事者として障害者雇用の現場にいる人の、これが実感なのだ。岸野さんは別のポストで、人は自分が損をしていなくても他人が得をすると許せない心理(スパイト行動)について触れているが、年金の話が職場で歓迎されない理由はまさにそれだろう。

申立書には実態を正直に書く。職場では話さない。この2つは矛盾しない。書類の中では徹底的にオープンに、書類の外では慎重に、が当事者の知恵だ。

一気に書かない。記録を溜めてから整える

申立書がしんどい最大の理由は、つらい時期を一気に思い出す作業だからだ。

  1. まず期間の枠だけ作る(病院名と時期を並べるだけ)
  2. 思い出したことを期間ごとに短いメモで溜める
  3. 溜まってから4要素の形に整える

思い出す作業と、文章にする作業を分ける。これだけで負担は目に見えて減る。

このアプリは、まさにこの手順をそのまま画面にしたものだ。質問に答えて枠を作り、日々のメモを溜め、たまったメモを申立書の文体に整える。書いた記録は端末の中だけに保存され、ログインも不要。基本機能は無料で使える。

よくある質問(FAQ)

Q. 初診日がどうしても思い出せません。申立書は書けませんか? A. 書けます。ただし順序が逆で、先に初診日の候補を絞る作業をしてください。お薬手帳、診察券、健康診断の記録、家計簿やカードの明細、転院時の紹介状の記憶が手がかりになります。実務者の発信でも、紹介状などの医療機関間の書類で初診日が確定するケースは多いとされています。詳しくは初診日がわからないときの調べ方へ。

Q. 働きながらの申請ですが、就労していると不利ですか? A. 「就労の事実」だけが伝わると「働ける=改善」と誤読されやすいのは事実です。ただし実務者が明言している通り、就労と受給は両立し得ます。欠勤・遅刻・早退の頻度、受けている配慮、障害者雇用か否か、業務内容の変更まで具体的に書き、実態を伝えてください。

Q. 症状を少し重めに書いたほうが通りやすいですか? A. 逆です。診断書と食い違った時点で申立書全体の信頼が下がります。虚偽が過ぎれば、利息つきの返還請求や刑事罰に至った例まであると実務者は警告しています。事実を頻度と具体例で書くことがいちばん強い書き方です。

Q. 通院していなかった期間は書かなくてもいいですか? A. 必ず書いてください。空白は「良くなって通院をやめた」と読まれる余地を生みます。通えなかった理由(症状、経済事情、通院への抵抗感)と、その間の生活実態をひとつの枠として書きます。

Q. 申立書は誰かに代わりに書いてもらえますか? A. 本人の申立てとして提出しますが、作成を家族が手伝うこと自体は問題ありません。請求手続き自体も、委任状があれば第三者が行えます。家族から見た生活の様子は、むしろ書類の整合性を支える材料になります。

Q. どのくらいの分量を書けばいいですか? A. 長さより密度です。各期間に「頻度・続いた期間・受けていた援助・できなかったことの具体例」の4要素が入っていれば、本記事のフル記入例程度(全体で1,000字前後)でも十分伝わります。逆に、感情の描写だけで枠が埋まっている申立書は、長くても伝わりません。

Q. 障害年金を申請したことは会社に知られますか? A. 申請したこと自体が勤務先へ通知される仕組みはありません。申立書に勤務実態を書いても、会社へ共有されるものではないので、実態を正直に書いてください。一方で、当事者の発信では「職場で自分から年金の話をしない」ことが処世術として強く勧められています。

Q. 社労士に依頼したほうがいいですか? A. 初診日の証明が難航しているケース、不支給後の審査請求、カルテが破棄されているケースなどは専門家の力が大きい領域です。一方、通院歴が整理できていて事実を書ける状態なら、自分で書くことは十分可能です。どこに相談すべきかの整理も参考にしてください。

まとめ: 審査員は書類しか読まない

※本記事は、X上で障害年金について発信している当事者・実務者(障害年金の呟き人さん @f1c3n4WE1KMklqQ、岸野さん @coco_ruuchan)の公開ポストの分析と、一般的な制度情報に基づくものです。受給や等級を保証するものではありません。正式な様式・記載要領は日本年金機構のホームページで、個別の判断は年金事務所・社会保険労務士でご確認ください。

参考リンク

制度の正式な情報・最新の様式は、日本年金機構のホームページおよび 年金事務所でご確認ください。