働きながら障害年金はもらえる?「働ける=改善」と誤解されない伝え方

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「働いていたら無理」は誤解。ただし条件がある

働きながら障害年金を受給できるのか。答えは、実務経験者の発信が繰り返し明言している通りだ。「正社員として働いている」「厚生年金を払っている」だけでは不正ではない。障害の状態が続いている限り、就労と受給は両立し得る。

だが同じ発信者が、裏側の警告も欠かさない。勤務の事実だけが審査側に伝わると「働ける=改善」と誤解されやすい——。つまり「働きながらもらえるか」の答えは、働き方の実態をどこまで伝えられるかで変わる。

この記事では、実務の現場で繰り返し確認されていることと、実際に障害を抱えて障害者雇用で働く当事者の生活実感の両面から、「働きながら」の申請・受給・更新のリアルを解説する。

認定基準は「就労禁止」とは書いていない

まず制度の建て付けを押さえたい。精神の障害の認定ガイドラインは、就労している人について「仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認したうえで日常生活能力を判断する」としている。「働いている人には支給しない」とはどこにも書いていない。 書いてあるのは「実態を見て判断する」だ。

厚労省が医師向けに出している診断書の記載要領も、就労欄について「就労している事実だけで支給決定が判断されることはありません」と明記し、援助や配慮の状況をできる限り記入するよう求めている。

制度は実態を見ようとしている。問題は、実態が書類に載らなければ、審査側には「就労の事実」しか残らないことだ。

「働けている」の中身 — 当事者の発信が示す実態の幅

では「実態」とは何か。障害者雇用の現場に精神2級の当事者としている人物の発信が、これ以上ない資料になる。

障害者雇用の心得として6万回以上表示されたポストで、この人物が挙げるのはこうだ。挨拶ができること。しっかりした勤怠管理。「ありがとう」「ごめんなさい」が言えること。——そして最後に、「絶対に『障害年金』の話はするな」(これは後述する)。

別のポストでは、障害者雇用の現実を私見として列挙している。十分な合理的配慮が得られるとは限らない。雇用形態は非正規が多い。給与だけでは足りない場合がある。求められるスキルや勤怠管理が健常者並のこともある。やりがいは求めるな——。

さらに日々のポストには、眠剤の時間で変わる睡眠、鬱の浮き沈み、三連休の安堵(「来週は4日勤務で週末を迎えられる」)が並ぶ。「働けている」とは、こうした波を抱えながら、配慮と自己管理でギリギリ成立している状態なのだ。

この幅が、審査書類に載るかどうか。それが「働きながら」の申請の分かれ目になる。

書類に載せるべき「実態」チェックリスト

診断書の就労欄と病歴・就労状況等申立書の就労状況欄に、以下が入っているかを確認する。

とくに見落とされるのが「職場外のコスト」だ。勤務時間中は取り繕えても、その代償が生活に出ているなら、それは日常生活能力の判定材料になる。診断書にこの実態を反映してもらう方法は診察前メモの作り方で、受け取った診断書の就労欄の確認は診断書のチェックポイントで解説している。

【実例】ソウタさん(35歳・障害者雇用)の「実態の書き方」

チェックリストを実例で通す。ソウタさん(35歳・双極性障害)は、障害者雇用の契約社員として週5日・1日6時間の時短で働きながら申請した。

申立書の就労状況欄(書き直し前):

現在は障害者雇用で事務の仕事をしています。周りに助けられながら、なんとか頑張って働いています。

書き直し後:

障害者雇用の契約社員として、週5日・1日6時間の時短勤務(主治医の意見により残業禁止)。業務はデータ入力に限定され、顧客対応と電話は免除されている。指示は口頭では抜けるため、すべてチャットで文書化してもらっている。直近6か月の欠勤は月2〜4日(いずれも抑うつ症状による起床困難)。通院のため毎月1日の中抜けに配慮を受けている。帰宅後は横になったまま動けず、夕食を抜く日が週3日。家事と金銭管理は同居の姉が行っている。給与は月約11万円で、生活費は姉の援助に依存している。

前者と後者で、事実はひとつも変わっていない。変わったのは解像度だけだ。「頑張って働いています」は美徳だが、審査書類の中では「支障なく働けている」と読まれる危険な一文になる。後者には、雇用形態・時間・業務限定・文書化の配慮・欠勤数・職場外のコスト・経済的実態まで、数えられる形で入っている。審査側が「一人で生活が成立しているか」を判定できる材料が揃って、初めて就労欄は味方になる。

診察前に主治医へ渡すメモも同じ調子でいい。「仕事は続いています。ただし——」の後ろに、上の後者の内容を箇条書きで並べるだけだ。診断書の就労欄は、医師がこの材料を持っているかどうかでまったく違うものになる。

職場で年金の話をしない — 当事者の鉄則の意味

申請を考える人が必ず気にするのが「会社に知られないか」だ。制度上の答えはシンプルで、申請したこと自体が勤務先に通知される仕組みはない

だが当事者の鉄則は、その先にある。前述の「絶対に障害年金の話はするな」だ。制度上知られなくても、自分から話せば知られる。そして受給の有無は職場の人間関係で妬みや詮索の火種になる。この人物は別のポストで、自分が損をしていなくても他人が得をすると許せない心理(スパイト行動)に触れているが、年金の話が職場で歓迎されない理由の説明として、これほど的確なものはない

書類の中では実態を徹底的にオープンに書く。職場では話さない。この使い分けが、働きながら申請する人の作法だ。

更新こそ「働きながら」の正念場

働きながらの受給で、実は申請より神経を使うのが更新(障害状態確認届)だ。実務の現場から出てくる要点はこうだ。

更新までの期間は一律ではない。令和6年度の障害年金業務統計では、新規裁定の更新期間は1年・2年・3年・4年・5年・永久固定に分かれている。働き続けている人は、次回の診断書でも就労の事実だけでなく、配慮や勤怠、職場外の生活への影響を伝える必要がある。まずは年金証書に記載された次回診断書提出年月を確認したい。

対策は一つしかない。最短1年で次の診断書が来る前提で、勤務実態の記録を止めないことだ。更新のたびに「この1年どうだったか」を記憶から復元する人と、メモを見返すだけの人とでは、診断書に載る実態の精度が違う。

不支給後の再請求について、前回の内容と比較され、立て直しが難しかったという実務家の事例報告もある。ただし、これはすべての再請求の結論を示すものではない。大切なのは、前回の提出書類と決定理由を確認し、事実と異なる点や伝わらなかった点を整理してから次の方法を選ぶことだ。

なお、等級と収入の関係で補足すると、通常の障害年金(20歳以降初診)には所得制限がない。収入が上がったこと自体で支給停止になる制度ではない(20歳前傷病のみ本人所得制限がある)。審査で見られるのはあくまで障害の状態だ。

「働きながら」を取り巻くお金の全体図

働きながらの受給を考えるとき、年金単体ではなく、障害のある就労生活のお金全体で見ておくと判断を誤らない。当事者の生活実感から出てきた知恵をいくつか置いておく。

「障害者にとって一番の薬は『お金』」—— 精神2級の当事者として働く人の、多くの共感を集めた言葉だ。認めたくないが、と前置きされたこの一言は、就労収入と年金の二本柱がもたらすのが贅沢ではなく治療環境(通院を我慢しない、休む判断ができる、悪化の恐怖が減る)だという実感を突いている。「働けているのに年金をもらうのは後ろめたい」と感じる人は多いが、制度は最初から「稼得能力が制限されている人の所得保障」として設計されている。後ろめたさで申請をためらう必要はない。

退職の判断は雇用保険の給付日数もセットで。 障害者等の「就職困難者」に該当する場合、基本手当の所定給付日数は、被保険者期間が1年未満なら150日、1年以上なら45歳未満で300日、45歳以上65歳未満で360日とされている。認定区分や受給要件は個別に確認が必要なので、退職前にハローワークへ相談したい。

退職後の国保は所得ゼロでも来る。 退職して収入が絶えても国民健康保険料の納付書は届く。金額に驚いたら、自治体の軽減措置があるのでまず役所に相談——これも当事者の実体験からの定番の助言だ。障害年金は非課税所得なので、年金受給が国保料の所得割を押し上げることはない。

働きながらの障害年金は、この全体図の中心にある「安定装置」だ。だからこそ、申請と更新のたびに実態を正確に伝え続ける価値がある。

等級判定ガイドラインは就労をどう見るか

もう一段、審査の内側に踏み込んでおく。精神の障害の等級は「等級判定ガイドライン」に基づき、診断書の日常生活能力の判定(7項目)と程度(5段階)の組み合わせの目安表を出発点に、考慮要素を加味して決まる。就労はこの「考慮要素」の代表格だ。ガイドラインが就労について確認するとしているのは、おおむね次の点になる。

裏を返すと、これらが書類に書かれていなければ、審査側は確認しようがなく、「就労あり」という事実だけが残る。ソウタさんの書き直し後の文例が効くのは、ガイドラインの確認項目に一対一で答えているからだ。審査側が確認したい順番に、事実を並べて渡す。 それが「実態を書く」の技術的な意味だ。

障害者雇用や就労支援(A型・B型)での就労は、援助を受けている事実がそのまま雇用形態に表れるため、書類上も伝わりやすい。問題は次のケースだ。

クローズ就労(一般雇用・非開示)の場合

障害を開示せず一般雇用で働いている人は、「配慮を受けていない=支障がない」と読まれやすい、最も誤解されやすいポジションにいる。だが、クローズだからこそ書けることがある。

「クローズで普通に働けているなら等級は無理」と一律には言えない。等級のハードルが上がるのは事実だが、審査が見るのはあくまで援助の要否と生活の支障だ。開示していないことは、援助が不要であることを意味しない——この一文を、頻度と具体例で証明するのがクローズ就労の申立書になる。

なお、申請のために職場へ開示する必要はない。前述の通り、申請が会社に伝わる仕組みはなく、当事者の鉄則も「職場では話すな」だ。クローズのまま申請して構わない。

更新の90日前チェックリスト

働きながらの更新を、運任せにしないための逆算リストを置いておく。障害状態確認届の提出期限(誕生月の末日)から逆算して——

期限に遅れると年金が一時差し止めになり得る。「診察の予約が取れなかった」は、精神科の予約事情では現実に起きる。90日前始動が、実務の現場で期限逆算が繰り返し強調される理由だ。

就労移行・A型・B型で働いている場合

一般就労・障害者雇用のほかに、就労移行支援や就労継続支援A型・B型で「働いている」人も多い。ここも整理しておく。

等級判定ガイドラインの考え方では、就労系福祉サービスの利用は一般企業での就労とは区別して評価される。B型(雇用契約なし・工賃)での作業は、それ自体が「援助のある環境での活動」であり、「働けている=改善」とは読まれにくい。A型(雇用契約あり)は雇用の形を取るぶん、支援員の関与・作業内容の調整・出席率まで書いて、援助の実態を示すことが大事になる。

いずれの場合も、書類には「事業所名」ではなく中身を書く。週何日通えているか(通えなかった週も)、支援員のどんな声かけで作業が成立しているか、工賃・給与はいくらか、体調で早退した頻度。福祉サービスの利用記録(事業所が持っている)は客観資料にもなるので、更新や申請の際に個別支援計画やモニタリング記録の写しをもらっておくのも実務的な一手だ。

「働きながら」にまつわる誤解を、最後に全部潰す

誤解①「就労を隠したほうが通りやすい」 — 論外だ。厚生年金の加入記録は審査側から丸見えであり、隠す意味がない上に虚偽になる。実務の現場で最も強い言葉で警告されているのが不正受給で、事実と異なる申告での受給は利息つきの返還請求、悪質なら刑事罰まであり得る。書くべきは「就労の事実+実態」であって、隠蔽でも誇張でもない。

誤解②「厚生年金を払いながら障害年金をもらうのはズルい」 — 制度上、まったく問題ない。障害の状態が続く限り就労と受給は両立し得るというのは、実務の現場が明言し続けていることだ。むしろ厚生年金を納め続けることは、将来の老齢年金や、万一の再申請・額改定の土台になる。

誤解③「昇給・昇格したら報告義務がある」 — 収入の変化を年金機構へ随時報告する義務はない(20歳前傷病の所得制限を除く)。障害状態は更新のタイミングで診断書により確認される。ただし、更新時の診断書には就労状況が書かれるので、実態の変化は結局そこで伝わる。日頃の記録を正確に、が唯一の正解であることは変わらない。

誤解④「年金をもらうと税金・扶養で損をする」 — 障害年金は非課税所得だ。所得税・住民税はかからず、確定申告も不要(他の所得がある場合はその分のみ申告)。配偶者の扶養(税法上)の判定にも障害年金は含まれない。社会保険の扶養(130万円/180万円基準)では収入に算入される点だけ注意が要るが、「もらうと損」になる場面はほぼない。

こうした誤解の多くは、「働いているのにもらうのは後ろめたい」という感情が根にある。だが当事者の言葉を借りれば、障害者にとって一番の薬は「お金」だ。就労収入と年金の二本柱は、贅沢ではなく、無理をしない働き方——欠勤する判断、通院を削らない判断——を可能にする治療環境そのものだ。堂々と、正確に、申請すればいい。

記録が、申請と更新と診察を全部支える

このアプリは、その日の実態を1〜2行で溜める作りになっている。「今日は早退。午後から動けず」「上司に確認してもらってやっと提出」。溜まったメモは、診察で医師に渡す書類になり、申立書の就労欄の材料になり、更新のたびの土台になる。記録は端末の中だけ、ログイン不要、基本機能は無料。

よくある質問(FAQ)

Q. フルタイム勤務でも障害年金はもらえますか? A. 制度上、就労自体は欠格事由ではありません。ただし援助や配慮なしにフルタイム就労が安定して続いている場合、精神の障害では等級該当のハードルは高くなります。配慮・欠勤・職場外の生活への影響など、実態次第です。

Q. 障害者雇用だと審査で有利ですか? A. 「有利」というより、配慮を受けて働いている事実が客観的に示しやすい、が正確です。逆に一般雇用でも、実際に受けている配慮や勤怠の実態を具体的に書けば伝わります。雇用形態は必ず書類に明記してください。

Q. 受給していることは会社にバレますか? A. 申請・受給が勤務先に通知される仕組みはありません。年末調整でも障害年金は非課税所得のため申告対象になりません。ただし自分から話せば当然知られます。当事者の発信では「職場で年金の話をしない」ことが強く勧められています。

Q. 働き始めたら支給停止になりますか? A. 就労開始が自動で停止につながる制度ではありません。次の更新時に、就労を含む直近の障害状態で審査されます。勤務の事実だけでなく実態(配慮・欠勤・生活への影響)が診断書に載るようにすることが重要です。

Q. 収入が増えたら減額されますか? A. 通常の障害年金に所得制限はありません(20歳前傷病による障害基礎年金のみ本人の所得制限があります)。

Q. 時短勤務や在宅勤務は書いたほうがいいですか? A. 必ず書いてください。時短・在宅・業務限定・通院配慮は、いずれも「援助・配慮を受けて就労が成立している」ことを示す客観的な事実で、認定ガイドラインが確認するとしている項目そのものです。

Q. 更新の間隔は自分で選べますか? A. 選べません。更新期間は個別に決まり、公式統計では1年から5年または永久固定があります。年金証書の次回診断書提出年月を確認し、勤務実態の記録を継続してください。

Q. 3級でも働きながらもらえますか? A. 3級(障害厚生年金のみ)はもともと「労働が制限を受ける」状態を対象にした等級で、就労との両立が制度上想定されています。初診日が厚生年金加入中にあることが前提です。

まとめ

※本記事は、X上で公開されている当事者・実務者の発信を参考にした情報と、一般的な制度情報に基づくものです。受給や等級を保証するものではありません。個別の判断は年金事務所・社会保険労務士でご確認ください。

参考リンク

制度の正式な情報・最新の様式は、日本年金機構のホームページおよび 年金事務所でご確認ください。